孫文と福岡(4)
カテゴリ : 孫文と福岡
〔3・13〕雑報 ○孫逸仙氏の旅程
孫逸仙氏一行は、来る十七日午後三時三十二分下り列車にて来福、水茶屋常盤館に投宿、十八日午後四時より川路知事・山田旅団長・湯浅裁判所長・神崎県会議長及び市長・市会議長・商業会議所会頭等の主催に係る、西中洲公会堂に官民連合歓迎会に臨み、十九日午前八時熊本に向け出発の筈、因に歓迎会々費は一円にて此際成るべく多数の来会を期する由、
〔3・14〕雑報 ○孫氏と筑豊鉱業家
不日来県すべき中華民国孫逸仙氏歓迎に関し、曩(さき)に筑豊鉱業組合の名を以て同氏を門司倶楽部に招待の筈なりしも、旅程取急ぎの為め右は中止し、安川・貝島・松本・麻生・中野・伊藤・堀七氏の連合にて、来十七日福岡着当日午後六時より東公園一方亭に招待の筈にて、同所嵯峨〔ママ〕経吉氏は専ら準備中なるが、同亭門頭には日華両国々旗を交叉し、玄関には赤地「歓迎孫氏」と金文字し縁に電灯装飾を施したる長五尺の扁額を掲げ、宴会場なる階上の大広間天井には民国々旗に因(ちなみ)て径五尺許(ばかり)の円形五色の彩灯二個を吊るし、室の周囲に彩色硝子(ガラス)の装飾を施こし、室外表通りには両国々旗五十流を交互に吊るし、同室及控室には安川氏外各主催者の秘蔵せる珍什佳品を配置する等、最も意匠を凝らしつゝあり、
〔3・17〕雑報 ○関門に於ける孫氏一行
孫逸仙氏は秘書官戴天仇及何天炯(かてんけい)・馬君武・宗(ママ)嘉樹(かじゅ)・袁華選(えんかせん)氏等を随へ、宮崎滔天氏等と与(とも)に宮島より昨十六日午前五時五十分下関停車場着、プラツトホームに待受けたる小林下関市長・宝辺(たからべ)同市会議長・内田下関商業会議所会頭・市参事会員・市会議員・杉下関水上署長・新聞記者其他官民数十名の歓迎を受け、直(ただち)に山陽ホテルに入り、楼上にて歓迎者の訪問に接し、少憩後一行と与(とも)に食堂に入り、朝餐を終へて暫時休憩し、此間新聞記者其他に対し会談したり、氏は載(ママ)天仇氏の流暢なる通訳に依り記者等に対し例の荘重なる態度語調を以て語つて曰く、
今回予の貴国訪問に際し、長崎上陸以来各地を歴遊せるに、到る所熱誠にして盛大なる歓迎を受けしは、今将に貴国を去らんとするに方り予の深く感謝して措く能はざる所なり、是れ貴国人の博愛の同情を以て世界の平和の為め、又た東洋の平和の為め弊国人に好意を表せらるゝ証拠にして、予は一私人のみならず民国の人民一同に代りて感謝の意を表せざるべからず、貴国人と弊両(ママ)人の間には一部誤解を懐きし者なきにあらざるも、唇歯輔車の両国間に於ては、互に博愛親密の精神を以て平和の為に提携協力せざるべからず、而(しか)して両国の親密は之を実行の上に現はさゞる可からず、今後民国に於ては、商工業其他国富の増進に事業の計画を要するもの多々あることなれば、提携協力以て其の発展を期せんことを望む、今回貴国人の予等一行に寄せられたる誠意好情は、予帰国の上は必ず普(あまね)く之を全国民に伝ふべし、而(しか)して感謝の趣旨は亦貴国人一般に伝へられんことを望む、云々、
話頭は鉄道其他に及びたり、一行休憩中、下関市よりは菓(ママ)物一籠、下関商業会議所よりは菓子一箱を何(いずれ)も贈呈したり、斯(か)くて出迎への汽艇は八時二十分門司鉄道桟橋着、安川清三郎・加納九鉄営業課長・岩崎門司水上警察署長等の出迎ひを受け、一行徒歩にて電車通に至り特別電車にて戸畑に向ひたり、
同 ○戸畑に於ける孫氏一行
門司上陸後の孫逸仙氏は岩橋(ママ)水上警察署長に迎へられ、安川清三郎・加納九管(ママ)営業課長等と共に、八時二十五分停車場前より安川家借切の軌電九車に乗り、戸畑に向ふ途中小倉より松本九軌支配人乗り込み、八時五十分三六停留所にて一同下車、其れより孫氏及び安川氏其他数名は自働(ママ)車にて、外は腕車(わんしゃ)にて午前九時明治専門学校々門に着し、安川敬一郎氏・的場校長以下職員諸氏に迎へられて校長室に入り、其れより校長以下諸教授の案内にて各教室・工場等を順次参観し、諸教授の説明、各種の実験等あり、十一時運動場に至り、当日は日曜なるに拘(かかわ)らず特に外出を見合せ此珍客を迎へし約二百の生徒等が勇壮なる発火演習と分列式を観、其れより職員生徒の方陣に囲まれ、随員載(ママ)氏の通訳にて大要左の如き演説をなし、終つて一同と共に安川邸に入り、午餐入浴の後休憩したり、
余は本日当校を参観し、生徒諸氏の兵式体操を見て其規律あるは痛感に禁(た)へず、却説(さて)余は深く今日世界の文明は科学の力に俟(ま)たざるべからざるを信ずるものなるが、当校は由来科学上の進歩発達を図らんが為めに設立したるものなり、然るに貴国に当校ありて諸氏が当校に在学せるは、啻(ただ)に貴国進歩の為めなるのみならず、又東洋科学の進歩の為めなる事を知らざるべからず、されば余は諸氏に望む、諸氏は将来貴国の科学興業の責任を負ふのみならず、又東洋発展の為め大なる責任を負ひたるものなり、故に余は此点に於て東洋の為め実に欣喜に堪へざるなり、最後に当校の進運を祝すると共に諸氏が斯(か)く各其志す処を大成せられん事を祈る、
同 ○孫氏歓迎余話
孫逸仙氏昨十六日朝山陽ホテルに休憩中、記者孫氏に対し、日本の鉄道御視察に関するに感想如何と問へば、氏は呵々笑つて曰く、ドウも到る処盛大の歓迎に殆(ほと)んど寸暇なく、実は鉄道視察も今回来遊の一の目的なりしも特に視察と云ふべきは東京にて中央停車場を視たる位のものにて、其他は往復旅行の汽車中の視察位に過ぎず、お話する程の事もありません▲宮崎滔天氏は関門間の船中にて語つて居つた、一昨日孫氏が宮島に於て神戸クロニクルを手にしながら、数日前のノースチヤイナデリーニユウズに東京電報として、北京より孫逸仙氏が日本に滞在するは不可なる由を在東京同国汪代表(宛脱カ)打電したるより、汪代表は日本政府と交渉の結果、遂に日本を退去するに至れり云々の記事を、更に神戸クロニクルに転載せるを見て荒唐無稽も茲に至つては殆んど噴飯に値すと、孫氏は傍人を顧みて哄笑したりと、
同 ○孫氏十七日日程
安川邸に滞在せる孫氏一行は、本日午前九時四十分戸畑発八幡に向ひ八幡製鉄所を参観し、午後一時二十分同駅発午後一時二十分同駅発(ママ、重複)午後三時三十分博多駅着の予定なり、
同 ○孫逸仙氏講演
本日来福すべき孫逸仙氏は明十八日午後三時より九大学友会の求めに応じ、病院等を視察したる後同大学図書館に於て一場の講演を為す由、一般有志も参聴自由なりと、
孫逸仙氏一行は、来る十七日午後三時三十二分下り列車にて来福、水茶屋常盤館に投宿、十八日午後四時より川路知事・山田旅団長・湯浅裁判所長・神崎県会議長及び市長・市会議長・商業会議所会頭等の主催に係る、西中洲公会堂に官民連合歓迎会に臨み、十九日午前八時熊本に向け出発の筈、因に歓迎会々費は一円にて此際成るべく多数の来会を期する由、
〔3・14〕雑報 ○孫氏と筑豊鉱業家
不日来県すべき中華民国孫逸仙氏歓迎に関し、曩(さき)に筑豊鉱業組合の名を以て同氏を門司倶楽部に招待の筈なりしも、旅程取急ぎの為め右は中止し、安川・貝島・松本・麻生・中野・伊藤・堀七氏の連合にて、来十七日福岡着当日午後六時より東公園一方亭に招待の筈にて、同所嵯峨〔ママ〕経吉氏は専ら準備中なるが、同亭門頭には日華両国々旗を交叉し、玄関には赤地「歓迎孫氏」と金文字し縁に電灯装飾を施したる長五尺の扁額を掲げ、宴会場なる階上の大広間天井には民国々旗に因(ちなみ)て径五尺許(ばかり)の円形五色の彩灯二個を吊るし、室の周囲に彩色硝子(ガラス)の装飾を施こし、室外表通りには両国々旗五十流を交互に吊るし、同室及控室には安川氏外各主催者の秘蔵せる珍什佳品を配置する等、最も意匠を凝らしつゝあり、
〔3・17〕雑報 ○関門に於ける孫氏一行
孫逸仙氏は秘書官戴天仇及何天炯(かてんけい)・馬君武・宗(ママ)嘉樹(かじゅ)・袁華選(えんかせん)氏等を随へ、宮崎滔天氏等と与(とも)に宮島より昨十六日午前五時五十分下関停車場着、プラツトホームに待受けたる小林下関市長・宝辺(たからべ)同市会議長・内田下関商業会議所会頭・市参事会員・市会議員・杉下関水上署長・新聞記者其他官民数十名の歓迎を受け、直(ただち)に山陽ホテルに入り、楼上にて歓迎者の訪問に接し、少憩後一行と与(とも)に食堂に入り、朝餐を終へて暫時休憩し、此間新聞記者其他に対し会談したり、氏は載(ママ)天仇氏の流暢なる通訳に依り記者等に対し例の荘重なる態度語調を以て語つて曰く、
今回予の貴国訪問に際し、長崎上陸以来各地を歴遊せるに、到る所熱誠にして盛大なる歓迎を受けしは、今将に貴国を去らんとするに方り予の深く感謝して措く能はざる所なり、是れ貴国人の博愛の同情を以て世界の平和の為め、又た東洋の平和の為め弊国人に好意を表せらるゝ証拠にして、予は一私人のみならず民国の人民一同に代りて感謝の意を表せざるべからず、貴国人と弊両(ママ)人の間には一部誤解を懐きし者なきにあらざるも、唇歯輔車の両国間に於ては、互に博愛親密の精神を以て平和の為に提携協力せざるべからず、而(しか)して両国の親密は之を実行の上に現はさゞる可からず、今後民国に於ては、商工業其他国富の増進に事業の計画を要するもの多々あることなれば、提携協力以て其の発展を期せんことを望む、今回貴国人の予等一行に寄せられたる誠意好情は、予帰国の上は必ず普(あまね)く之を全国民に伝ふべし、而(しか)して感謝の趣旨は亦貴国人一般に伝へられんことを望む、云々、
話頭は鉄道其他に及びたり、一行休憩中、下関市よりは菓(ママ)物一籠、下関商業会議所よりは菓子一箱を何(いずれ)も贈呈したり、斯(か)くて出迎への汽艇は八時二十分門司鉄道桟橋着、安川清三郎・加納九鉄営業課長・岩崎門司水上警察署長等の出迎ひを受け、一行徒歩にて電車通に至り特別電車にて戸畑に向ひたり、
同 ○戸畑に於ける孫氏一行
門司上陸後の孫逸仙氏は岩橋(ママ)水上警察署長に迎へられ、安川清三郎・加納九管(ママ)営業課長等と共に、八時二十五分停車場前より安川家借切の軌電九車に乗り、戸畑に向ふ途中小倉より松本九軌支配人乗り込み、八時五十分三六停留所にて一同下車、其れより孫氏及び安川氏其他数名は自働(ママ)車にて、外は腕車(わんしゃ)にて午前九時明治専門学校々門に着し、安川敬一郎氏・的場校長以下職員諸氏に迎へられて校長室に入り、其れより校長以下諸教授の案内にて各教室・工場等を順次参観し、諸教授の説明、各種の実験等あり、十一時運動場に至り、当日は日曜なるに拘(かかわ)らず特に外出を見合せ此珍客を迎へし約二百の生徒等が勇壮なる発火演習と分列式を観、其れより職員生徒の方陣に囲まれ、随員載(ママ)氏の通訳にて大要左の如き演説をなし、終つて一同と共に安川邸に入り、午餐入浴の後休憩したり、
余は本日当校を参観し、生徒諸氏の兵式体操を見て其規律あるは痛感に禁(た)へず、却説(さて)余は深く今日世界の文明は科学の力に俟(ま)たざるべからざるを信ずるものなるが、当校は由来科学上の進歩発達を図らんが為めに設立したるものなり、然るに貴国に当校ありて諸氏が当校に在学せるは、啻(ただ)に貴国進歩の為めなるのみならず、又東洋科学の進歩の為めなる事を知らざるべからず、されば余は諸氏に望む、諸氏は将来貴国の科学興業の責任を負ふのみならず、又東洋発展の為め大なる責任を負ひたるものなり、故に余は此点に於て東洋の為め実に欣喜に堪へざるなり、最後に当校の進運を祝すると共に諸氏が斯(か)く各其志す処を大成せられん事を祈る、
同 ○孫氏歓迎余話
孫逸仙氏昨十六日朝山陽ホテルに休憩中、記者孫氏に対し、日本の鉄道御視察に関するに感想如何と問へば、氏は呵々笑つて曰く、ドウも到る処盛大の歓迎に殆(ほと)んど寸暇なく、実は鉄道視察も今回来遊の一の目的なりしも特に視察と云ふべきは東京にて中央停車場を視たる位のものにて、其他は往復旅行の汽車中の視察位に過ぎず、お話する程の事もありません▲宮崎滔天氏は関門間の船中にて語つて居つた、一昨日孫氏が宮島に於て神戸クロニクルを手にしながら、数日前のノースチヤイナデリーニユウズに東京電報として、北京より孫逸仙氏が日本に滞在するは不可なる由を在東京同国汪代表(宛脱カ)打電したるより、汪代表は日本政府と交渉の結果、遂に日本を退去するに至れり云々の記事を、更に神戸クロニクルに転載せるを見て荒唐無稽も茲に至つては殆んど噴飯に値すと、孫氏は傍人を顧みて哄笑したりと、
同 ○孫氏十七日日程
安川邸に滞在せる孫氏一行は、本日午前九時四十分戸畑発八幡に向ひ八幡製鉄所を参観し、午後一時二十分同駅発午後一時二十分同駅発(ママ、重複)午後三時三十分博多駅着の予定なり、
同 ○孫逸仙氏講演
本日来福すべき孫逸仙氏は明十八日午後三時より九大学友会の求めに応じ、病院等を視察したる後同大学図書館に於て一場の講演を為す由、一般有志も参聴自由なりと、




























